最近はもっぱら「考えたらまとめる、まとめたら考える」の方に色々書いています。

2009年11月08日

今やらないでいつやるの?「砂の女」感想

砂の女 (新潮文庫)
砂の女 (新潮文庫)
posted with amazlet at 09.11.08
安部 公房
新潮社
売り上げランキング: 12399
おすすめ度の平均: 4.5
5 時代を超えて読み継がれる作品
4 砂、そして吸い上がる水へ
5 「砂の女」向きの読者、そうでない読者
5 ここまで想像力をかきたてさせる文章力がスゴい。
5 本から砂が湧いてくる


感想


非常に面白かった。

ストーリーはざっとこんな感じ。
主人公は砂丘へ昆虫採集に出かける。
そこで砂丘の底にある一軒家に閉じ込められる。
なんとか脱出を計ろうとする主人公。
それを阻止しようとする村の人。

何が一番面白かったかと言われればその生々しさだ。
雰囲気が非常に生々しい。
特に水分に関しての描写が僕にはぐっときた。
例えば次のシーン。

ふいに、舌の裏側から、ねばりけのある唾液が、ふきだしてくる。しかしその唾を飲込むわけにはいかない。唇と歯のあいだにたまった砂が、その唾を吸って、口いっぱいに広がるのだ。土間にむかって、唾をはいた、しかし、いくら唾をはいても、口のざらつきはなおらなかった。口が、からからになっても、まだ砂は残っていた。まるで歯の間から、次々と新しい砂がつくられていくようだった。

読むと自分の口の中もベタベタしてくる。
すごい喉が渇く小説。

最後主人公が外に出ることができたのか…は読んでからのお楽しみということで書かないが、
結末まで読むと
「人生もこんな風にならないようにしないとな」
と思ってしまう。
僕にはこの小説が人生の一つの縮図のように感じた。

「今やらないでいつやるの?」
そんな言葉が浮かんでくる小説だった。


参考リンク


レビュー書いたあとアマゾンのレビュー見たら皆結構「喉乾く」って言ってますね。
やっぱり喉渇きますよね。これ。

daily scraps
読みやすくてクリアな感想が書いてありました。
砂の女って映画化されてるみたい。

インタラクリ
映画の方の感想です。
そういやータイトル砂の「女」ですね。
女メインに考えて読んでなかった。

\ 不思議 BLoG ⊂(・ω・`)⊃ パンドラ BoX /
中3の読書感想文。
中学生の時にこれ読んだらどう思うのだろう。
全く印象が違う気がするな。

机上の空論?
気持ち悪い、だがそれがいい!
同感です。

posted by イズミ at 15:04 | Comment(2) | TrackBack(0) | 小説レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年11月01日

人は必ずしも合理的に行動するとは限らない「未成年」感想

未成年 上巻 改版 (新潮文庫 ト 1-20)
ドストエフスキー
新潮社
売り上げランキング: 12508
おすすめ度の平均: 4.0
4 主人公
5 なぜドストエフスキーの小説はダントツに面白いのか
3 これが消えた理由は
5 「カラマーゾフ」の世界を準備する力作


「人は必ずしも合理的に行動するとは限らない。
むしろ人は非合理的に行動することの方が多いのではないか。」

読んでいて、そんなことを言っていた友人を思い出した。

主人公を含む登場人物たちは予期せぬ行動をする。
思わず読んでて「何でだよ!」と突っ込みたくなる。

たとえば、
貯金の大切さを長々と説いた後、博打しまくりの男に
思わず「何でだよ!」

Aのことを愛していると熱狂的に語ったその次の日にBに結婚を申し込む男に
思わず「何でだよ!」

登場人物の心理が非常にめまぐるしく動いていくのだ。
このような心理の動きと一緒に、物語は二転三転と大きく変化していく。
展開の振れ幅の大きさがでかくて飽きない。面白い。


小説の作りに関して言おう。

まずドストエフスキーの小説は大体そうだと思うが、
なかなかストーリーが進んでいかない。
前回までのあらすじがやたら長いアニメのドラゴンボールを思い出す。
プロットの前進よりも主語を充填していくことに重きを置いている。
起きた出来事、その時の心情について非常に詳しく書かれている。
人によっては「くどい」と思うだろうが、そのくどさにうまみがある。

たとえば冒頭部分はこんな感じ。

わたしは自分を抑えきれなくなって、人生の舞台にのりだした当時のこの記録を書くことにした。しかし、こんなことはしないですむことなのである。ただ一つはっきり言えるのは、たとい百歳まで生きのびることがあっても、もうこれきり二度と自伝を書くようなことはあるまいということである。実際、はた目にみっともないほど自分にほれこんでいなければ、恥ずかしくて自分のことなど書けるものではない。ただ一つ自分を許せるとすれば、みんなが書くような理由から、つまり読者から賞賛をえたいために、書くのではないということである。

と、このような感じでいきなり説明に3ページ費やす。

いきなりストーリーが始まらないところが実にいい!
「ドストエフスキーの作品が始まった!!」という気になる。

そして煽りがやたら多い。
一時期流行ったバラエティ番組、ガチンコを髣髴させる。
「この後、とんでもない事態が!!」
みたいな煽りが所々入ってくる。

この煽りがなかなか上手い具合に効いている。
ちょうどいい位置に煽りが配置されていて、
ページをめくるモチベーションになる。


昼メロとか、サスペンスが好きな人にオススメ。
キャラの濃い登場人物たちの駆け引きが楽しめます。

posted by イズミ at 22:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年09月13日

小学生に読ませたい「塩狩峠」感想

塩狩峠 (新潮文庫)
塩狩峠 (新潮文庫)
posted with amazlet at 09.09.13
三浦 綾子
新潮社
売り上げランキング: 4080
おすすめ度の平均: 4.5
5 忘れることの出来ない一冊に!
4 塩狩峠に行ってみたくなりました
5 是非お勧めします
5 「正しい人間など一人もいない」という意味
5 涙しました


小学生に読ませたい作品


心の中にずしんと直球を投げ込んでくるような作品。
犠牲、死、差別、約束。
これら道徳的なテーマについて主人公永野信夫が考えながら成長していく作品だ。
非常に道徳的で、「これって忘れちゃいけない大事なことだよなぁ」としみじみ感じた。
是非小学生に読ませたい。
どのテーマも小学生が考えるのに適していて道徳の教科書にオススメだ。

たとえば信夫が虎雄に屋根から落とされた後のシーン。
「虎雄に落とされたのか?」という質問に対し、信夫はこう言う。
「ぼく町人の子なんかに屋根から落とされたりするものですか」
主人公の信夫は「永野家は士族。町人の子とは違う」と祖母からいつも聞かされていたのだ。
信夫のこの台詞を聞いた信夫の父は怒り、人間はみな同じということを信夫に教える。

他にもこんなシーンがある。
夜中の学校にお化けが出るかどうか確かめようと、信夫たちは夜に学校に集まる約束をする。
しかし、雨が降っていたので「大した約束でもないし」と信夫は行くのをやめようとする。
そこですかさず父親は言う。
「そうか。雨が降ったら行かなくてもいいという約束だったのか」
「約束を破るのは、犬猫に劣るものだよ。犬や猫は約束などしないから、破りようもない。人間よりかしこいようなものだ」
「信夫。守らなくてもいい約束なら、はじめからしないことだな」
お父さんカッコいい!!シビレルゥ!!
子供に言ってあげたい台詞。
「守らなくてもいい約束なら、はじめからしないことだな」

信夫の友人、吉川の不具者に対する考察もいいシーンだ。
吉川の妹ふじ子は生まれつき体が不自由。
吉川はふじ子について信夫にこう言う。
「ふじ子たちのようなのは、この世の人間の試金石のようなものではないか。どの人間も、全く優劣がなく、能力も容貌も、体力も体格も同じだったとしたら、自分自身がどんな人間かなかなかわかりはしない。しかし、ここにひとりの病人がいるとする。甲はそれを見てやさしい心が引き出され、乙はそれを見て冷酷な心になるとする。ここで明らかに人間は分けられてしまう」
んー。なかなか面白い指摘。
小学校の国語の教科書に載ってそう。
「あなたはこれに対してどう思いますか?自分の意見をまとめてみましょう」
とか文末に載っちゃってそう。

小学生が道徳を考えるのに適しているということは、
大人が普段は考えない大事なことを考えるのに適しているということ。

最後にジョジョっぽくてカッコいい台詞があったので、それを引用して終わることにしよう。
若さとは混沌としたものだろうか いや、若さとは成長するエネルギーだ
〜永野信夫〜
posted by イズミ at 19:14 | Comment(0) | TrackBack(2) | 小説レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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