最近はもっぱら「考えたらまとめる、まとめたら考える」の方に色々書いています。

2009年10月18日

小説レビューの教科書「小説の読み方〜感想が語れる着眼点〜」感想

小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)
平野 啓一郎
PHP研究所
売り上げランキング: 21557
おすすめ度の平均: 4.0
2 「本の読み方」となにが違うの?
4 小説の構造を理解するために
4 著者のような読解力の獲得には至らない
4 小説は全体を読むこと
5 小説のつくりかた??


概要


基礎編と実践編の二部構成。
基礎編では小説とは何かについて、著者なりの考えを述べている。
実践編では実際の小説を解説している。
実践編で取り上げられた作品は以下のようなラインナップ。
『幽霊たち』、『蹴りたい背中』、『若さなき若さ』、
『日本文学盛衰史―本当はもっと怖い「半日」』、
『辻―「半日の花」』、『ゴールデンスランバー』、
『髪―「幻」』、『アムステルダム』、『恋空』


ニコラスティンバーゲンの四つの質問


「ニコラスティンバーゲンの四つの質問」というものがある。
これはノーベル生理学賞を受賞したニコラスティンバーゲンが
動物行動学の基本としてあげたものだ。
著者はこの「四つの質問」が小説を読むときのアプローチに有用だと述べている。

「四つの質問」は以下のようになっている。

@メカニズム:小説の舞台設定、登場人物、配置と出入り、プロットの展開、文体などに着目する。
A発達:その作家の人生の中でどういうタイミングでその作品が出てきたか考える。
B機能:小説が作者と読者との間で持つ意味。ジャンル分け。
C進化:社会の歴史、文学の歴史の中でその小説がどんな位置づけにあるか。

なるほど。
なかなか使えそうな分類だ。
僕の場合は機能の面から感想を書くことが多い。

著者はこの四つの質問を上手く利用して感想を書きなさいと述べている。
例えば発達の面で好きな作品がけなされているならば、
他の3つのアプローチを使って擁護してみたりすることを薦めている。


述語の二分類


述語は大きく二つに分類される。
主語充填型とプロット前進型である。
小説はこの2つの述語を使って作られている。
主語充填型の述語で登場人物の説明をし、
プロット前進型の述語でストーリーを進めていく。
どちらに重きを置いているかで作品の雰囲気は変わっていく。


まとめ


レビュアーにとって使えるフレームワークを教えてもらった。
述語の二分類とか非常にわかりやすい!
よし、今度小説の感想書くときに使ってみよう。
実践編で使われている作品は読んだことのないものばかりだった。
これらの作品を読んだことがある人には、なかなか面白いレビューなのではないかと思う。

ちなみにこちらが著者のブログ。
平野啓一郎公式ブログ
最近の小説のレビューが多いなと思ったら、
「漱石、鴎外、三島、川端といったオーソドックスな作家」
の作品は前回の本で書いているんですね。

あとこっちも参考リンク。
システム会社で働く新入社員のブログ
僕の感想よりも詳しく書いてあります。

posted by イズミ at 23:02 | Comment(2) | TrackBack(0) | 新書レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年10月01日

身近な疑問を経済学的に解説「経済学的思考のセンス」感想

経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)
大竹 文雄
中央公論新社
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4 選挙の季節の必読書、経済学で世の中を眺める本
4 インセンティブ
4 インセンティブが行動を決める
4 インセンティブから社会を見る力と経済データから因果関係を見つけ出す力
4 センスだけなら身につけられる・・・かも


インセンティブと因果関係


日常のさまざまな話題を経済学的の視点で議論することを通じ、経済学の本質を理解しようというのがこの本のコンセプト。

この本を一言でまとめてみよう。

「経済学的思考のポイントはインセンティブの観点から物事の因果関係を見出すことである」

これがこの本のまとめ。
インセンティブっていうのはやる気、意欲のこと。


相続税の変更と死亡時期


面白かったデータがこれ。
「相続税の変更は死亡時期に影響する」
という事実。
「来年相続税が安くなります」と言われたら、今死にかけの人も来年まで生き残る可能性が上がるというのだ。
金銭的なインセンティブはある程度死ぬのを遅らせるという。
すごい事実ですね。


身長プレミアム


あと身長プレミアムっていうものの存在も面白い。
1センチ身長が高くなると時間あたり賃金は約0.8%高くなるという身長プレミアムがあるそう。
高収入と高身長は関係があるんだって。
へぇー。
posted by イズミ at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新書レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年09月13日

良いと悪い、善と悪は違うんですね「道徳の系譜学」

道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫)
フリードリヒ ニーチェ
光文社
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おすすめ度の平均: 5.0
5 ルサンチマン論を核とするキリスト教批判


とりあえず第一論文読了


久しぶりに哲学書を読んだ。
古典新訳で読みやすくなっているとはいえ、
やっぱり結構硬いね、ハードだね。
ペンを持ってしっかり考えられる環境じゃないとこういうのは読めないため、読むのに非常に時間がかかった。
併読してると哲学書は読まなくなっちゃうし、
かといってこればっかりに集中すると読書ペースがかなり落ちる。
ということでとりあえず第一論文だけ読んでレビューを書く。
また気が向いた時に読もう。

「善と悪」と「良いと悪い」の違い


第一論文のタイトルは「「善と悪」と「良いと悪い」」。
この論文には君主道徳と奴隷道徳が対比して書かれている。
簡単にまとめるとこうだ。

君主道徳:高貴な、身分の高い人間が作った道徳。「良い」という根本概念をまず自発的に考え出した。そこから「悪い」というイメージを作り出した。「良いと悪い」。ローマ、ルネサンス、ナポレオンの道徳。

奴隷道徳:政治的弱者たちの作り出した道徳。まず「悪しき敵」を考え出した。その「悪人」を基礎概念として、対症的な像として「善人」を考えた。「善と悪」。ユダヤ人、キリスト教の道徳。

以下ウィキペディアより引用。
・ニーチェによると、特権階級は自分たち自身の行為を「よい」("gut")と定義した。この場合の「よい」とは、「高貴な」、「貴族の」、「強力な」、「幸福な」等々という意味である。その一方で、彼ら君主たちは、他の卑しい人々の行為を「わるい」("schlecht")とみなした。ただし、この場合の「わるい」とは、「素朴な」("schlicht")、「平凡な」、「貴族でない」という意味であって、ことさらそれらの人々に対する非難のニュアンスが込められているわけではない。
・特権階級に従属する卑しく、貧しくて不健康な人々、つまり「奴隷」によって価値の序列が逆転される。彼らの感情はルサンチマンに基づいており、彼らはまずもって他者を「悪人」、すなわち「悪しき敵」とみなす。その後はじめて、彼らはまさしく悪人に対立する者として、自分たち自身を「善人」と定義する。換言すると、彼らは「悪」("böse")でないがゆえに、「善」("gut")である。つまり、貴族にとっての「よい」という概念が能動的であるのに対して、奴隷の「善」概念は反動的なのである。


感想


ルサンチマンとか、ニーチェ思想は大学受験のとき倫理で勉強したが、違った角度からニーチェの思想を味わうことができた。
君主道徳と奴隷道徳の起源の違いというのは面白い。
2つの対立する概念があったら、どっちか先にできる方があるわけだ。
君主道徳の場合は良いが先にできた。
アンパンマンと一緒ですね。
アンパンマンが最初に生まれて、それを倒すためにバイキンマンが生まれたのは君主道徳的。

気になった言葉


哲学者は価値の位階の序列を定めなければならない
posted by イズミ at 10:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新書レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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